空気環境

換気装置の選択は、科学的な根拠が必要?

■第1種・第2種・第3種換気装置の選択

●第3種換気・第1種熱交換 【A・全熱式・B・顕熱式】

■A・第1種「全熱交換」換気とは?

全熱交換は特殊な膜を使用し、温度(顕熱)と一緒に湿度(潜熱)も交換します。浴室やトイレ等の湿気と臭いの強い空間からの排気は出来ないので局所換気が必要です。室内で発生した様々な菌が、熱交換素子に付着して増殖する恐れがあり、古くはアメリカの「在郷軍人病」等の感染事故や院内感染、乳幼児の細菌感染等は、熱交換素子の汚染空気が拡散して起こります。空気清浄をフィルターで行うため、頻繁な交換が必要です。

全熱交換の場合は、室内で発生した様々な菌が、フィルターに付着して増殖する恐れがあり病院の院内感染、乳幼児の細菌感染などは、全熱交換の空調ダクトを通じて病院全体に拡散して起こります。全熱交換を維持するためにはフィルターの交換やメンテナンスを頻繁に行う必要があります。

冬の平均外気温が-5℃の北欧と、7℃近い外気温がある熊本(5・6地域)では、冬期に22℃の室温設定で、外気温との差は15℃、夏期は28℃の室温設定で、熊本の平均外気温は28℃でほぼ同じ、仮に30℃としても2℃程度の差しかありません。熊本では冬のほんの少しの期間しか、熱交換の恩恵は受けません。

 

B・第1種「顕熱交換」換気とは?

 

顕熱交換は、熱交換器に湿度は通さない樹脂を使用し、温度(顕熱)のみを交換します。湿気も臭いも回収しない為、キッチン・トイレ・浴室の換気も可能です。樹脂製の熱交換器が汚れてきた場合は、水で洗浄が可能です。夏場に外の湿度が高い場合は、湿気がそのまま室内に入ってきます。

顕熱交換が全熱交換よりも安全なのは、熱交換器で内・外空気を混合しないで、熱を写し取る方式だからで、熱の回収率は低くなります。北欧のように内外温度差が大きい場合は、有効ですが、我が国の場合は、北海道以外はほとんど効果はありません。夏は、熱交換にバイパス装置を付けて熱交換を停止しています。

草原住宅「循環空調システム」は狭小住宅以外、上図のように床の隅から排気します。排気口はクローゼットやトイレ、廊下等に設けて居室から汚染物質を引き離して捕集。各居室には、天井から「循環空調」が行われ、暖冷房空気が供給されるため、室内に浮遊する物質は、自然に排気口の方に押しやられます。

 

帯電フィルターで、常に新鮮空気を供給?

機械力に頼る装置よりも、自然を活用する装置の方が安全性が高まります。

■換気先進国は、第3種が基本です

換気装置の先進国、スウェーデンで新築住宅で採用されている換気装置は、第3種換気「排気型換気システム」(水タンクに50%以上熱交換する排気型システムを含む)が90%〜95%で、残りの5〜10%が顕熱型熱交換器(第1種換気)です。

■その「全館空調」ダクトの掃除は可能ですか?

スウェーデンでは、1990年頃に「熱交換換気システム」のフィルターや給気ダクトの非衛生が判明し、1975年以降に建築された建物の熱交換換気システムについては、学校・幼稚園で2年に1回、集合住宅では3~4年に1回、給気ダクト等の清掃を義務付け。

排気システムは5~7年に1回、排気ダクトの清掃義務(有識者による清掃チェック)が義務化されています。個人住宅の排気型セントラル換気システム(第3種換気)のダクトについては、ダクト清掃の定めはありません。いま計画されている「全館空調」システムは、もしもスウェーデンの様に、給気・排気ダクトの清掃義務化が始まっても大丈夫な「全館空調」ですか?

■草原住宅「循環空調システム」

●「床置、床下エアコン」+「循環空調システム」

 

草原住宅「循環空調システム」は現在、最もシンプルな「全館空調」で、住宅の断熱・気密性能を合理的に高めた結果生まれたシステムです。本冊子では他工法の「全館空調」の特徴も踏まえて、草原住宅「循環空調システム」という、超シンプル工法がどの様な思想で開発されたのかをお伝えします。