「循環空調システム」を理解する為の建築の基礎知識。

住宅づくりに失敗しない為には、基本的な建築用語を理解することから始まります。

住宅の構造部材について

住宅を造るためには、多種多様な材料が使われ、工法も様々です。

これから実際に住宅を建てる為に、知って置くべき、基本的な用語を解説します。

草原住宅の工法の特徴を理解し、他工法との違いを比較検討して下さい。

■躯体構造

主な住宅の構造と素材は、以下の3種類です

①【在来軸組】

日本の伝統的な工法ですが、本格的な在来軸組は現在は寺社仏閣など「伝統建築物」に生きています。在来軸組工法は、我が国古来からの伝統工法で、柱を継ぐ場合、ほぞ穴を切り欠く事から、弱くなると言われますが実際は、ほぞ穴に継ぎ手が組み込まれた時点で相乗効果が働き、強度が増す働きがあります。

②【プレカット工法】

現在、最も一般的な工法で在来軸組のディテールを継承し、コンピュータ管理の機械で加工されます。プレカットは在来軸組工法のほぞ穴や切り欠き部分の強度を計算し、接合部分を浅くして機械力で加工します。現在は在来工法とプレカットを融合させて、接合部分は耐震金物で補強され、近年の新築住宅は震度7でも簡単に倒壊しません。

③【緊結金物(きんけつかなもの)工法】

在来軸組工法の木組み方法を特殊金物によって、緊結し、耐震性能などを高めた工法です。緊結金物工法は、様々な金物が開発されていますが、それぞれに特徴があります。草原住宅では、在来工法とプレカット、基準法の耐震金物を合算させて住宅の強度を高め、緊結金物の採用はしておりません。

④【2×4(ツーバイフォー)・木造枠組壁工法】

在来工法のように柱を使わないで、2インチ×4インチを基本とする北米からの輸入工法です。板材で構造を組む工法で、その板材の厚さが名称になりました。2×6や2×8等、板材の幅や厚さで様々な構造や強度が生まれます。日本では「木造枠組壁工法」と呼ばれます。①の2×4を基本として、②2×6・③2×8・④2×10+構造材の⑤4×4と言うように、ランバー材の幅が工法によって選択されます。2×4工法は、柱が無いので空間が広く取れるという利点があります。

B・軽量鉄骨構造・鉄骨構造

①一般住宅の軽量鉄骨構造は、多くのプレハブメーカーが採用している構造です。欧米では「スチールハウス」などと呼ばれることもあります。

C・鉄筋コンクリート構造

沖縄・南九州や離島など、台風襲来地に多い鉄筋コンクリート住宅ですが、コンクリート住宅の寿命は40〜60年程度で、リフォームや増築も難しく木造住宅の耐久性や強度も、台風に耐えられる水準にアップし、鉄筋コンクリート住宅は減少しています。

住宅に求められる「シンプル」とは何か?

シンプルな住環境を求めて、いつの間にか重装備になり不健康な住環境をつくる愚!

1万年もの長い間、続いた縄文時代は、竪穴式住居の優れた断熱性能によって支えられてきました。その伝統工法は「白川郷」などの「茅葺屋根」として縄文から現代までも受け継がれています。

■近代の断熱施工は50年にも満たない

日本の断熱工法は北欧や北米から、寒冷地の住宅工法として導入されました。歴史は50年にも満たない最近の技術です。意識して断熱が行われる様になったのは最近ですが、住宅を断熱すると言う試みは「桂離宮」の様に、日本にも西欧にも同じような発想がありました。断熱の発想は薪を燃やす暖炉から石炭やコークスに移り変わり、鋳物性のストーブという発熱体を有効に活用し、よりシンプルに生活するための方法として考え出されました。

■隙間風で気密の重要性が再認識

北欧の鋳物性のストーブは、気密の重要性も再認識させました。暖房すると上昇気流が起こり、隙間から一斉に隙間風が入ってきます。縄文人は茅葺き屋根と縦穴で隙間風を塞ぎました。北極のイヌイットは圧雪でイグルーを造り-50℃にも耐えています。これは雪の断熱性と気密性を利用した仮住居で、世界一シンプルな高断熱・高気密住居です。

■機械力に頼らない「シンプル」の重要性

効果的な断熱・気密性能があれば、圧雪で造った仮屋でも、アザラシ油の灯火と体温で、-50℃にも耐えられます。圧倒的な設備で快適性を求めるよりも「シンプル・イズ・ベスト」という、始原に立ち返って快適の重要性を草原住宅は考え続けます。

■日本人は縄文時から、断熱の重要性を認識していた!

屋根に施工された茅(かや)は、厳密には高い防水性から屋根材として選択されたと思われますが、屋根と壁が一体施工されている状況から、屋根と共に壁の断熱材としての効果も認識されていたと思われます。竪穴の床は焚き火の熱で、現代の床暖房と同じ様な効果があり、意外に快適だったと思われれます。茅は油分があり水をはじくのに対し、稲わらや麦わらは、水を吸ってしまうので、屋根には使用出来まませんでしたが、縄文時代以降の掘っ立て小屋時代には、ムシロ等に加工されて壁の断熱にも施工されました。近世の日本で最も古い断熱施工は、桂離宮の床下に施工されていた籾殻の断熱施工です。白川郷の茅葺屋根は、大屋根構造で小屋裏を断熱し、養蚕部屋として使用し、通気性の良さからも現代まで受け継がれてきました。

■気密・断熱性が高いと-50℃の圧雪の中でも生活が可能!

雪を固めた圧雪には沢山の気泡があり、空気が詰まっています。セーターや羽毛布団等、空気を多く含む衣類は断熱(保温)効果が高く、体温を逃がしにくいので暖かいのです。雪も同じで雪の熱伝導率は密度で変化しますが、密度が低いと0.1(W/m・k)より小さくなります。これは断熱材の発砲ウレタンと同レベルの値です。この様に、気泡を多量に含む雪は優れた断熱材で、アザラシ油の灯火で表面が溶けて再凍結すると隙間が塞がれ気密性能も高くなり、秋田県横手の「かまくら」も、外気温はマイナスでも内部は5℃位になるようです。積雪に埋もれる多雪地帯よりも、冬の外気温が10℃以上になる温暖地域の「空っ風」の方が寒さを厳しく感じます。草原住宅が機械力ではなく「シンプル」にこだわるのは、住宅性能による「循環空調」が最も優れた住宅の温熱効果を示せるからです。室内でアザラシの脂を灯すと内壁が少しだけ溶け、圧雪のブロックの隙間を埋め隙間風を防ぐ事が出来ます。人々は裸で、抱き合って寝ているそうです。

内断熱・外(外張り)断熱工法の特徴と施工法!

断熱工法の選択は、工務店の施工法や暖冷房方法を知る重要な意味があります。

住宅の断熱施工は、重要な基本性能

断熱工法

断熱とは、住宅の外と内側の熱の流れを遮断し室内の温熱環境を室外の影響から守ることです。

A・内断熱工法

主にグラスウールやロックウール、セルローズファイバー等の繊維系断熱材を構造材の内側に施工します。結露を防ぐ為に、袋入りグラスウール断熱材が主流ですが、先張りシートや防湿シートをしっかりと施工し、構造材と断熱材の間に隙間を造らない施工が重要になります。

B・現場発泡ウレタン吹付・内断熱工法

構造の外側に構造用面材を施工した後で、室内側に発泡ウレタンを吹き付ける内断熱工法。基礎から小屋裏まで発泡ウレタンを吹き付けるため、気密施工も同時に行えますが、発泡ウレタンメーカーのカタログ値では気密性能(C値=2cm2/m2)と表記されています。発泡に切れ目のない施工が重要です

C・外(外張り)断熱工法

一般的な外断熱工法は、構造の外側に構造用面材が施工され、その外側にウレタンやスチレン等、化学系の板状断熱材を施工します。外周に施工するので暖熱材の施工ムラが少なく、気密性能も良くなります。最近では板状のグラスウールも開発され、外断熱に採用され始めています。

D・ハイブリッド断熱工法

草原住宅は外断熱と内断熱を組み合わせた、ハイブリッド工法を採用しています。一般的なハイブリッド断熱は、外側に化学系板状断熱材、室内側に繊維系断熱材の場合が多いようですが、草原住宅は外側、内側共にスチレン断熱材を施工しています。

室内で大量の送風が行われる空調設備の場合は、給気と排気が同じ量の第1種換気でも、暖房時は正圧では無く、多少加圧気味になります。室内空気は室内温度で膨らんで、外に逃げようとします。気密性能が重要なのは当然ですが、隙間があると室内の水蒸気も勢いよく漏気しますから、結露の心配が出てきます。冬期の「全館空調」は、乾燥気味になるシステムが多く、加湿が必須になるので、益々結露の心配が大きく、カビの発生が心配です。「循環空調」は絶対にカビの発生を防がなければなりません。

草原住宅は「ハイブリッド・エコハートQ」を標準採用していますが、断熱材は、種類を変えずに同じスチレン断熱材を採用しています。外側の断熱材には、遮熱アルミ面材を施工しています。熱を運ぶ太陽光は、電磁波ですからアルミ面材ではじかれて室内への侵入は最低限に制御され、夏の涼しさに効果的です。冬の場合は、太陽光の暖かさは遮断されますが、室内から逃げる熱を少なくする効果があり、合理的に制御されています。

シンプルな躯体で「循環空調」が可能な訳?

床から排気することで、より効率的な給排気が可能になり安全性が増します。

■内断熱と外断熱の違いは何か?

最も大きな違いは、暖房の場合の部屋の暖まり方です。部屋の暖まり方は、断熱材の位置によって異なります。間欠暖房の場合、部屋が暖まりやすいのは内断熱です。それは断熱材に熱源が近いため構造躯体を暖める必要が無いからです。逆に24時間暖房では、外断熱の方が構造躯体まで暖めるので、快適性が持続し、湿度も比較的に高くなります。

■夏は外断熱の方が有利になる?

夏の場合は、冬とは逆に外断熱の方が太陽光と断熱材が近いため、早く断熱効果が表れます。内断熱の場合は、構造用合板が熱を受け止め、構造材と共に蓄熱層になりその部分から熱が侵入します。これを防ぐ為には、遮熱・防風・透湿シートなどの施工が必要になります。それと開口部・窓の性能が遮熱対策に、大きな影響を与えます。

夏も冬も快適な遮熱対策に特化した躯体構造「ハイブリッド・エコ・ハートQ」工法

冬の寒さ、夏の暑さ、間欠運転、全館暖冷房の省エネルギー化、住宅に関する様々な問題を解決するために考案された「ハイブリッド・エコ・ハートQ」。暖冷房の省エネルギー化の他に、防火対策があります。それは、構造用面材に火山性ガラス繊維で出来ている燃えない素材を採用し、火災にも強い構造を目指しています。また、耐圧盤配筋基礎など、地震対策も万全な工法です。

「循環空調システム」の要、基礎構造と基礎断熱。

基礎の内断熱はカビ対策が不十分、基礎断熱の施工法で判る住環境への配慮。

●一般的的な「全館空調」の解説は「全館空調」、自社工法の解説はこだわりを持って、草原住宅「循環空調システム」と表記しています。

基礎コンクリートを蓄熱層にしない

基礎断熱の基礎を断熱する場合は、あくまでも基礎外周部の断熱が基本です。日本では、白蟻被害が頻発したために、公的融資基準でも基礎内部の断熱工法も許容されてきましたが、防蟻対策用の外周施工用断熱材も開発され、基礎外周部の断熱が可能になりました。「循環空調システム」を採用する場合はカビ対策のために、基礎外周の断熱は必須の条件です。

基礎の断熱工法

A 基礎・内断熱工法

基礎コンクリートは蓄熱層になります。本格的な外断熱の場合は、基礎・壁・屋根の外周部を断熱材で包み込む工法です。基礎を除く、壁・屋根だけの外断熱は北欧では認可されません。鉄筋コンクリートの集合住宅で室内側に断熱材を施工した場合、壁が冷熱の蓄熱層になってカビが発生するのと同じ原理です。この場合は、カビの胞子が全館に供給される危険があります。

B 基礎・外断熱工法基礎

コンクリートは蓄熱層になります。本格的な外断熱の場合は、基礎・壁・屋根の外周部を断熱材で包み込む工法です。基礎を除く、壁・屋根だけの外断熱は北欧では認可されません。鉄筋コンクリートの集合住宅で室内側に断熱材を施工した場合、壁が冷熱の蓄熱層になってカビが発生するのと同じ原理です。この場合は、カビの胞子が全館に供給される危険があります。


C 基礎外・内断熱併用工法

基礎外周に防蟻断熱材を施工し、基礎内部にも断熱材を施工することが最も安全な基礎断熱になります。特に「循環空調システム」の場合は、外周と共に基礎内部の内断熱を併用する工法が最適です。「循環空調システム」では、基礎の内部構造にも注意が必要です。

●基礎外張り断熱工法

基礎の断熱は外張り断熱が基本です。基礎内部に断熱材を施工する工法は、白蟻対応の防蟻断熱材が開発されていなかった時代の暫定的な工法で、防蟻断熱材が開発されている現在では、基礎外周部の断熱以外の選択はありません。実際には外周部の基礎断熱だけでも不十分で、地表温度の影響を受けない基礎断熱施工が重要です。

●壁外張り・基礎内断熱工法

基礎の内断熱は、冬は基礎コンクリートが冷熱の蓄熱層になり、コンクリート製の集合住宅で、室内側に断熱材を施工した場合、躯体と断熱材の間にカビが発生する様に、基礎と断熱材の間にカビが発生します。カビの発生は致命的で、壁・屋根に外張り断熱を採用する場合は、基礎も外張り断熱で施工しなければなりません。

●草原住宅 循環空調システム・外内断熱工法

冬の地表温度で、水道管が凍結しないよう、都道府県別に「凍結深度」を設定し、凍結しない深さまで掘り下げて水道管を埋設するように、安易な地中熱の使用は不可能です。草原住宅では、基礎外周に防蟻断熱材、基礎内部に遮熱・断熱シートを施工し、基礎内部を室内と同等の温熱環境にします。基礎の断熱施工で、工務店の技術力が比較できます。

基礎・内断熱は、白蟻・カビ・土台も危険!

「全館空調」の基礎断熱は基礎外周を断熱しないと、冷蓄熱で様々な問題が発生。

基礎内部を使う「全館空調」の場合は、正式な基礎外断熱が必須の条件です!

●基礎内断熱の施工状況

写真①では、白蟻の侵入は全く気がつきません。高性能ウレタンに、現場発泡ウレタンで隙間が埋められています。写真②のコンクリート部分に泥が付いています。剥がした断熱材の裏側に、蟻道が掘られている様子が分かります。

図・1は白蟻の侵入経路ですが、発見が遅れる理由は、白蟻が化粧モルタルと基礎のすき間から侵入するからで、白蟻防除業者は外周(点線)からよりも、化粧モルタルと基礎の微妙なすき間から侵入するケースが多いと指摘しています。蟻道に泥が付いているのは、乾燥に弱い白蟻は、泥で蟻道を造り、水分を補給する必要があるからです。基礎断熱の基礎を中継地点として、縦横に蟻道を広げて、壁の断熱材から土台・壁上部にと次々に食害していきます。

●断熱材の下に造られた蟻道

住宅金融支援機構で基礎内断熱は認められていても、誰も被害に対しては保証しません

基礎内部の断熱工法は住宅金融支援機構等、公的に認められていますが、防蟻基礎断熱材も開発されている現在では、正式な基礎断熱を行うべきです。基礎用の防蟻外断熱材には、おおむね2種類の断熱材があり、防蟻薬剤をスチレンフォームやEPS断熱材に混入させて、白蟻が食害すると死滅する製品と、白蟻の食害を受け付けないポリカーボネート樹脂で、侵入を防止する方法があります。大半は経費高になるとの理由で、従来通りの基礎・内断熱で施工していますが、写真の様に白蟻の侵入を許してしまいます。基礎内部に熱源を設置したり、暖房熱を給気して基礎暖房等を行い「全館空調」を行うのであれば、確実に防蟻基礎断熱材で基礎外周の断熱を行うべきです。「全館空調」でなくとも、基礎内部を使用する工法は全て、カビ対策からも基礎外周の断熱と基礎内部にも断熱材の施工を行うことで、基礎内部の空気環境を清浄化することが出来ます。カビの胞子を全館にまき散らすことだけは避けなければならないからです。

草原住宅は、防蟻外断熱基礎を採用しています。

●防蟻外断熱基礎模式図

本格的な基礎外断熱工法は、右図のような構造になります。基礎外周部に防蟻断熱材を施工しなければ、防蟻やカビの被害を免れません。

従来の基礎断熱は基礎内断熱で施工していましたが、それは外断熱基礎用の防蟻断熱材が開発・普及していなかったからです。「住宅金融支援機構」の融資条件仕様書では、現在でも基礎内断熱は認められていますが、防蟻外断熱材が信頼性を持って採用できる時代になり、草原住宅では基礎の内断熱工法から、本来の基礎外断熱に変更いたしました。

草原住宅の今までの基礎内断熱は大丈夫なの?

今日までの草原住宅の基礎内断熱の防蟻対策は万全です。
「循環空調」の温熱環境は快適性と共に防蟻対策にもなります。

■草原住宅では「循環空調」を採用していますが「循環空調」以前の通常工法では、防蟻対策と断熱効果を高めるために、基礎断熱ではなく主に床断熱を採用してきました。

■「循環空調」の採用で基礎内断熱が必要になりましたが、防蟻断熱材を採用していなかった時代には、基礎周囲の防蟻消毒を綿密に行い、基礎にシロアリを寄せ付けない対策をとって施工してきました。現在まで、シロアリ被害の報告はありません。

■草原住宅の「循環空調」の場合は、基礎内部に循環空気が流れますから、基礎内部にシロアリが最も嫌う微風が吹いている状態で、シロアリが乾燥状態になるため、蟻道を造ることができず、シロアリは生息できない環境になっています。

■「循環空調」を採用されて基礎内断熱で施工されたお施主様の場合、上記のように基礎内部に絶えず「循環空気」が流れていますから、基礎内断熱でもシロアリ被害の心配は全くございません。温熱環境的にも快適な環境が実現しています。